2005/2/20(日) 曇り 時々 晴れ |
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朝からどんよりとした曇り空。気温も低く気分が盛り上がらない。。。どうしようかなぁ〜寒いし、今日でなくってもなぁ。。。クヌギは逃げないし。。。と逡巡することしばし、出発の予定の7時を過ぎても布団にもぐりこんだままだ。確かにクヌギは逃げたりはしない。でも今日でなければ見られない花が咲いているかもしれない。樹の芽は日毎に膨らんで次の機会にはほころんでしまっているかもしれないじゃないか! とにかく自分を奮い立たせ、布団を抜け出した。 | |||
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今日向かうポイントは、地形図とにらめっこで見つけ出した選りすぐりの里山だ。実際の風景を見てみなければわからないが、以前は素晴らしい里山が広がっていたことだろう。目的地に近づくにつれて車窓の景色がどんどん魅力的になって行く。。。と、道路脇の小さな栗林の脇にさっそく早春の色を発見!すぐに車を止めて近づいた。 | |||
マンサク・トサミズキ・アブラチャン・クロモジ・・・透明感のある黄色い花はまさに早春の彩り。そしてその代表とも云えるのがこの「ロウバイ」だ。まだ春とも云えないような1〜2月の寒空に、まるでロウ細工のような端正で可憐な花をつけてくれる。もう咲き終わっていてもおかしくない時期だけに、きっと今日を逃せば出会うことはできなかっただろう。 ダダをこねずに布団を抜け出してきて良かった〜(^^ゞ。 | |||
かなり手の入った林であるが、植林地帯には相変わらず倒木が目立つ。 | ようやく現れてきた落葉樹の疎林だが、樹種の大半はアカメガシワなどのパイオニアツリーだ。これらから、畑が放置された場合に形成される元畑型の雑木林への遷移(せんい)途中であると推測される。 | ||
根元からの伐採後に萌芽更新したと考えられるサクラ。クヌギ・コナラほどではないが、ヤマザクラも雑木林の一員だけのことはあって、比較的旺盛な萌芽力を持っているらしく、時折株立ちのものを見かけるが、これほど蛸の足のようになっているのは珍しい。 | 明るい林床では、落葉低木の「クロモジ」の葉芽・花芽が赤く染まって春の訪れを待っている。雑木林の中木層を構成する代表的な樹種のひとつだ。 | ||
ようやくまとまった数のクヌギが見つかった。かつて根元からの萌芽更新を繰り返したことがうかがわれる樹形が多いが、残念ながら樹液の期待できるメクレやウロを持つものは見当たらなかった。 | |||
雑木林の縁の日当たりの良い場所には、既に何度か登場しているフユイチゴ。常緑の艶やかな葉が眼に眩しい。 | ゾウの耳のようなキノコの仲間。山里の散策では多彩なキノコを眼にするが、全く同定できていない。いずれはきちんと勉強したいものだ。 | ||
比較的乾燥した台地上に畑が広がり、その台地を侵食するように入り組んだ谷津には水田を作ると云うのが、地形を生かした典型的な利用方法だ。ここには正にその教科書通りの谷津田が今も残されていた。 | |||
真っ先に眼に飛び込んできたのは、水田の周囲を取り囲むように廻らされた細い水路。U字溝などはどこにも使用されておらず、全て土を掘り下げて作られた自然の流れだ。 | 水田には今も水が残っている。冬の間は水を抜いて土を休ませる「乾田」の方が生産性が良いと云う。しかし、常に根垂水(ねだれ)が滲み出ている谷津田では完全に水を抜くことは困難で、こうして水の残る湿田とせざるを得ない。そしてその水こそが、春まだき産卵をするアカガエルやサンショウウオにとって、不可欠なものであるのだ。 | ||
傾斜のある谷津を水田に利用するためには、(棚田のように)ひな壇状に水田を配する必要がある。その土手の草は綺麗に刈られ、火入れまでされている。こうすることで早春にいち早く目覚める草花は、一杯の春の日差しを浴びることができるのだろう。 | 谷津の奥から眺めおろす。周囲には水源涵養に役立つ落葉広葉樹林が冬枯れの樹姿を見せている。気が付けばいつの間にか晴れ間が広がり、美しい里山の風景を明るく照らしてくれていた。 | ||
狭い谷津田には不釣合いなほど多くの水は、どこを源としているのだろうか? | 根垂水は、通年ほぼ同じような水温であるため、冬は暖かいが稲を作るためには冷た過ぎると云う。そこで周囲に水路を廻らせて迂回させ、暖めてから水田に注ぐようにしている。枯れることのないこの水路は、多くの生き物の生命を支えているのであろう。 | ||
谷津の最奥部にあたる「谷頭(こくとう)」は、斜面から常に搾り出されている根垂水のために湿地化している。こういった谷頭周辺には、湿度の高い環境を好むクヌギが植えられていることが多いが、今回は見つけることができなかった。 | コンコンと湧き出でる根垂水。落ち葉が分解してできたミネラルをたっぷり含んだ湧き水で潤わされる水田では、きっと素晴らしいお米が作られるに違いない。 | ||
水路にはカワニナが沢山住んでいる。これだけの条件が揃えば、ホタルが生息していないはずがない。6月の上旬の夜、必ず訪れてみよう。 | オランダガラシ(クレソン)が繁茂し、白い花を咲かせている。 葉を一枚齧ってみる。独特の風味が口いっぱいに広がった。。。 |
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谷頭の一部は、こうしてアシやガマが生える湿原になっている。 イナバノシロウサギの火傷の傷を、大国主命(オオクニヌシノミコト)がガマの穂で癒してあげたと云う神話を、はたして今の子供のどれだけが知っているのであろうか。 |
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想像を超える素晴らしい谷津田の風景に、我を忘れてしばし佇んでいた。どんな方がこの里山を維持管理しているのだろう。そしていつまで続けていってくれるのだろう。 神聖な、畏怖に近い気持ちをもって、振り返り振り返りしながら、その場を後にした。 |
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あれだけの素晴らしい谷津田を後にして願うのはただひとつ、何とかこの近くで有望なクヌギを見つけたいと云うことだ。もし仮にここに立派なメクレクヌギがあったとしたら、、、古より生き永らえたオオクワの子孫たちが残されていたとして何の不思議があろう。。。どうか、神さま。。。 | |||
。。。で、見付けたこのうしろ姿。 40過ぎの男がコブシを握りしめ「ぉおっしゃぁ!」と叫んだとして、何が恥ずかしい!?(^_^;) |
横綱クラスと呼ぶには少々憚られるが、小結級は十分にあるだろう。この1本のおかげで、この里山にひと夏通う理由が出来たことが大きい。 | ||
樹液痕も露わな目の高さのメクレも手付かずのまま残され、 | 頭上のメクレにも採集者の影はない。 この夏この樹で、憧れの24時間観察をおこなってみたいものだ。 |
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素晴らしい谷津田を前に思いのほか時間を取られてしまった。できればあと2〜3本、良い樹を見つけておきたい。。。車で30分ほど移動を続けると、クヌギ林が見えてきた。(もう一度)どうか、神さま。。。(^_^;) | |||
、と云っている側から特大の幹径をもつクヌギの陰が見えた! が残念。みたくれだけの電柱台場だった。。。 |
太いクヌギは多いのだが、、、 | ||
どれもこれも、見た目ばかり。 | こんな残骸(演出なし。ホントにこの形で見付けた)が残されていることから、ノコやカブトは間違いないのだが、一面の笹を踏み分けて入り込むだけの気力の湧いてこない林だった。 | ||
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ということで、本日のクヌギの収穫はあの小結クラス1本。 しかし、それを補って余りある素晴らしい1日となったのは間違いない。今でもあんな場所が残されていることに心の底から感動を覚えた。弱気にならずに出かけてきて本当によかった。 どうかいつまでも、この里山風景が残されてくれますように。。。 |
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