2005/7/23(土) 曇り 時々 雨 |
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あれよあれよと云っている間に、気付けはもうシーズンも終盤だ。新たに開拓している千葉のポイントだが、あのスペシャルな谷津田を除けば、思わしい結果を得られていない。望外の成果を得たことは事実だが、有望な樹は1本でも多いほうが良い。少々欲が出たこともあり、久しぶりに日中のフィールドに出かけることにしよう! | |||
まずはなんと云ってもオオクワゲットの谷津田周辺を徹底チェックだ。ところで、今まで「小結」などと失礼な呼び方をしていたこのポイント、ぜひ出世させたいものだと思っていたところ、ある方から「子供の頃にカブクワ採れまくりのお宝ポイントを『天竺』と呼んでいた」との話を聞いた。 『天竺』!なんて秀逸なネーミングだろう!!子供の感性のなんと素晴らしいことか。タケカワユキヒデの唄う「♪そこに行けば〜♪どんな夢も〜♪叶うと云うよぉ〜 ♪」のガンダーラが脳裏に響き、シビレた。 |
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これだ!!!(^O^)/ | |||
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、と云うことで、土曜日朝5時に天竺でキムシンと待ち合わせることにした(^o^) | |||
色々な生き物が集まってくる天竺駐車場には、、、ミヤマのメスだ!残念ながら無残な姿だが、生息が確認できたことが非常に大きな成果だ。 | 調子に乗って灯下を探すうちに更にヒラタを発見!!!オチはみなさんお分かりのように。。。腐肉を求めるオオヒラタシデムシ m(__)m | ||
期待のクヌギだが、わずか10日程の間に随分と樹液が止まってしまっているようだ。 | オオスズメバチ、カナブン、カブ♀ | ||
アオカナブンかなぁ〜? 眺めながら1枚撮影すると、軽やかに飛び去られてしまった。(多分普通のカナブンの変異の範囲) |
がっぷり四つに組んだ大歯のノコ同士。ここまでしっかり組み合った姿も珍しい。守るべきメスは?呑気にお食事中。。。男はつらいなぁ(^_^;) | ||
前回気に掛かっていた奥の深〜いメクレにはコクワの姿。メクレ・ウロを逐一調べたが、いくつかは奥の奥までは確認出来ていない。 「メス」の二文字が浮かんでは消える。。。 |
合流したキムシンが、少し離れた地面の土がモゾモゾ動くのを発見。やがてカブ♂が這い出てきた。少々たどたどしい感じだ。おそらく羽化後初めて地上に出たのではないだろうか。 | ||
天竺には2種のアカガエルが生息している。左が千葉県レッドデータブック最重要保護生物A類のニホンアカガエル、右はヤマアカガエルの若い個体。明らかに違うように見えるが、成長したヤマアカガエルでは体色の違いでは見分けにくくなる。ポイントは、背骨をはさんで両脇にある白い線。この白い線が、目の後にある鼓膜(色が濃くなっている部分)の上部と一直線につながるのがニホンアカガエルだ。 | |||
カエルなどの両生類が種類・数ともに豊富なこの谷津田では、その捕食者たるヘビも良く見かける。これは模様のとても美しいヤマカガシ。溶血性の毒を持つので注意が必要だが、今まで何度も見かけてきて一度たりとも攻撃らしい動きを見せられたことがない。大人しいヘビだ。 | |||
コミスジチョウと思われる。天竺へ続く山道をスースーと飛び羽を開いて止まる姿を良く見かける。 | こちらも山道でよく見かけるキチョウ。夜間、何頭ものキチョウが集まり、このように葉の下に垂れ下がって休んでいるのを見かける。 | ||
こちらは一見するとガのように見えるが、調べてみるとベッコウハゴロモと云う、ヨコバイなどに近いカメムシ目の昆虫だった。 | ヒメジャノメと思われる。 | ||
カラスアゲハ。黒いアゲハチョウは何種類かあるが、本種はカラスの濡れ羽色を思わせるこの青緑に光る美しい金属光沢が特徴だ。 | |||
蝶の同定は本当に難しい。白けりゃモンシロチョウ、黄色きゃモンキチョウ、黒くて大きければクロアゲハ。。。程度の知識じゃ、もちろん歯が立たない(^_^;) 撮影した写真を図鑑と比較しようにも、大半は翅を広げた標本ばかりで、翅をたたんで止まっていることの多い生態写真の同定にはあまり役立たない。結局は図鑑でおおよその科を類推し、後は色々なホームページと首っ引きで調べているが、蝶の世界、研鑽を積んだ素晴らしいHPが多く大変参考になる。特に私淑しているHPをリンクページにアップしたので、一度訪れてその世界に浸ってみて欲しい。(^^) | |||
刀折れ、矢尽き果てたという感のオオミズアオ。 | イネの花。花粉を風で運ぶ「風媒花」のため、昆虫をおびき寄せるための仕掛け(花・蜜など)は持っていない。秋には実がパンパンに膨れ、中には美味しいお米が詰まっているはずだ。 | ||
ショウジョウトンボ。とにかくハッとさせられるくらいに全身が真っ赤に染まる。 | こちらはノシメトンボ。赤トンボの見分けも、門外漢の俺には難しいが、翅の先端が褐色になる赤トンボは、本種と、リスアカネ・コノシメトンボのいずれかだと考えれば良いだろう。 | ||
最近フィールドノートによく登場するキムシンと、彼がこの日撮影した1枚(右側)。田んぼの明るい緑を背景にショウジョウトンボの真紅が映える。(写真は無断拝借(^^)v ) | |||
朝露に輝く緑の田んぼに止まるショウジョウトンボ。言葉にならないくらい美しい姿だ。 | 青々とした稲の広がる谷津田の風景。写真左奥と右奥の谷頭(こくとう)から湧き出る根垂水(ねだれ)と雨水だけが、ここに住まう全ての命を支えている。 | ||
イネの間に網を張り獲物を待ち構えているナガコガネグモ。クモの巣には時折左の写真のような白い模様が入るが、これを「隠れ帯」と呼ぶ。一説には紫外線を反射し、獲物をおびき寄せるのだと云われる。 | |||
端正な巣を張るコガネグモ。里山を代表する大型のクモだ。クモの左下に「かくれ帯」の一部が見えるが、一般的には2本ずつ揃えた足の延長線上にジグザグのかくれ帯を「X型」に作る。西日本各地ではコガネグモのメスを棒の上で相撲させて遊ぶクモ合戦が古くから伝わるという。 | |||
ここで垂れ込めた雨雲からついに雨粒が落ちてきた。 | |||
雨の強弱の帯が、波のような振幅をもって静かに谷津田に降り注ぐ景色もまた美しい。一幅の山水画を眺めているようだ。何枚もシャッターを切ったのだが、その美しさの何百分の1さえ伝え得るものを撮ることは適わなかった。 | |||
雨宿りの樹の下でフト見上げると、派手な赤い虫が何やら蠢いている。。。アカサシガメだ。動きがぎこちないと思いきや、長い口吻の先にゾウムシの仲間と思われるエサに突き刺したまま、葉の表へ裏へ、我々のフラッシュを避けて逃げ惑っているようだ。カメムシ目の多くが植物の汁を吸うのとは異なり、サシガメはこのように獲物の体液を吸う。 | |||
体液を吸うカメムシ類の代表と云えば水生昆虫だ。と思いついて、流れの緩やかな水路の溜まりを探すと、はたしてコオイムシの幼体が見つかった。子供とは云え前足は頑丈で力強く、口吻は鋭い。 | |||
水路脇の薮の中で羽化しているオニヤンマを発見。オニの名の由来であるもトラ皮模様が色付きはじめている。時間を置いて戻ると、優雅に翅を広げていた。威風堂々としたこの姿、正にトンボの王様と呼べるだろう。 | |||
こちらはコマツナギ。草本(草)に見えるが、立派な?小低木。背丈の低い刈り取り草原に多く、細く弱々しいが、馬を繋げるほど丈夫なことからその名がついたと云う。 | 雨に打たれて花弁が寄ってしまったのだろうか?手持ちの図鑑では同定が出来なかった。 | ||
少し湿った斜面に咲く「チダケサシ」。淡紅色の繊細な花弁が美しい。本種の茎に、「チダケ」と呼ばれる美味しいキノコ(チチタケ)を刺して家に持ち帰ったことから付いた名前だという。 | |||
雨に濡れ、一段と美しさを増すツユクサ。 | 田の脇に植えられたカキノキにも青い実が付き始めている。 | ||
左の写真は、すぐ隣にある放棄田。こちらは別の持ち主が、昨年から耕作を放棄したという。「去年は2回草刈りしてくれたが、今年はどうなることか。。。」と人の良い地主のおばちゃんが心配していた通り、手を入れられないままに帰化植物のオオアレチノギクに覆われていた。 画面の奥の少しだけ濃い緑に見える部分はガマ。放棄され、ガマの生える湿生から徐々に乾燥化しているのだろう。 残念なことだが、一方でこのまま放棄された場合にどのように優先する植物が遷移してゆくのかも興味深い。。。 |
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放棄されて草が伸び放題になったこの場所には、畦や谷津の斜面とは異なった生物がすでに住み始めていた。本来の姿ではないのかも知れないが、多様な自然度合いの空間が広がることは、そこに住まう生き物たちの多様性を育むことになるだろう。。。 | |||
草原に多いキリギリスの仲間、ヒメギス。 | 可愛らしいカナヘビも、まばらな草原を好む。 | ||
ここで、軽トラックで地主のオヤジさんがやってきた。前回お会いした時はおばちゃんの向こうで無愛想に(失礼(^_^;)!)草刈りをしていて、会釈程度しか出来なかったのだが、今回は色々とお話を聞くことが出来た。中でも一番驚いたのは、水田とヤマの境にあるクズに覆われた急な斜面が、かつては全て小さな棚田だったと聞かされたことだ。農政の指示で、基準に満たない小さな田を放棄したと云う。そういえば「『あいうえお田』と呼んで笑うくらい、畳くらいの小さな田が50枚も並んでいたのよ」とおばちゃんが懐かしそうに話していたっけ。。。目を閉じるとその頃の風景が浮かんでくるような気がした。 | |||
まったく、天竺はいつも新しくて楽しい発見があり、どれだけ時間があっても足りない(^^) しかし今日は「新たなカブクワポイントを見つける」という大切な目的がある。降っては止みを繰り返していた空が明るくなって来たのを機会に、名残惜しくも谷津田を後にした。 | |||