2005/10/2(日)  晴れ

10月に入り、すっかり秋の気配が漂って来た。9月は連休の多い月だが、何やら忙しくてフィールドに出る機会に恵まれなかった。今日は穏やかで、抜けるような青空が朝から広がっている。こんな日はどんな犠牲を払ってでも出かけなければ!!(^^ゞ
な〜んて、、、ホントは前夜から天気予報を確認し、ちゃんと準備を整えていた(^o^)! 少し寝坊したが、朝8時半に家を出て、久しぶりの天竺へ向かった。

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天竺

しばらくご無沙汰しているうちに、景色はすっかり秋めいていた。目にする生き物たちの姿も夏とは様変わりしている。初めて迎える天竺の秋は、いったいどんな装いで俺を迎えてくれるのだろう。。。
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路傍には、彼岸花やコスモスが咲き、見上げれば色付く果実が。都会の喧騒の中では気付き得ぬ、季節の足音がここでは確かに聞こえてくるようだ。
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柿の幹に止まるアカタテハ。お目当ては熟して落ちた柿の実だ。この季節、カキノキの周りでは成虫のまま冬を越すタテハの仲間の姿を見かけることが多い。 こちらは翅が傷んで少し可哀想な気のするベニシジミ。
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この時期、ひときわ目立つ白いヒヨドリバナには、オオハナアブ(のメス)やコアオハナムグリ、
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それに、初見のトホシオサゾウムシなど、花に集まる小さな昆虫たちが目白押し。。。 こちらはまだ花期には少し早いのか?あまり見栄えがしないが、秋の七草のひとつ、オミナエシ(女郎花)。
天竺は、人里を通り過ぎた後に山道を入った場所にある。いつもはあまり注視せずに通り過ぎる人里の中の道端だが、目を凝らせば開けた畑などを好む昆虫たちに会えそうだ。特にチョウやハチなど、今まであまり意識して眺めてこなかった虫たちにも、これからは注目してみよう。
そうこうして山道に入ると、見かける生き物たちも変わってくる。。。
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ヒカゲチョウは、人の気配に敏感でなかなか良い写真を撮らせてくれない。幼虫は笹などを食する。 ここ天竺で一番ポピュラーな赤トンボである、ノシメトンボ
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コミスジが風に煽られてヨロヨロと地面に着地。いつもなら比較的高い場所に止まることが多いが、、、傷んでボロボロになった姿が痛々しい。 既に何度か登場しているヤマトシリアゲだが、ようやく♂を見つけることができた。命名の通り尻を上げる様子や長い口吻がなんとも不気味に思える。
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これも何度も登場しているオオアオイトトンボ。翅を広げて止まることで、他のイトトンボと見分けることができる。 これは日陰を好むクロコノマチョウ。温暖化に伴って分布域を広げていると聞く。夏型は翅の縁がオレンジ色に滲んで美しいのだが、これは秋型。おそらくこのまま越冬するのだろう。
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オオカマキリやニホンアカガエルなども、食欲の秋を満たすため?エサを探してウロウロ。。。
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秋の雑木林の薄暗い林床につきもののミズヒキの赤い花 道端には、ゲンノショウコ
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秋らしく、美味そうなキノコを発見! 食用のクリタケか?猛毒のニガクリタケか???(^_^;)
もちろん判断はつかない!(^^ゞ
これはベニチャワンタケ。時折林道脇などで見かけ、勝手にベニキクラゲなどと命名していたが、今回はちゃんと調べました。。。(^_^;)
051002_103.jpg (30144 バイト) 左は、前回山梨でも見つけたツルニンジンの花。これに限らず、一度名前を覚えると案外身近な場所で次々見つかると云う例は多い。
意識せずにいると、いかに多くを見落としているかを証明しているのだろう。

ひとつでも多くの生き物にスポットを当てることで、ひとつでも多くの生き物たちの存在に気付く、繊細な男になりたいものだ(^_^;)?

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そうこうしてたどり着いたいつものクヌギ。10月に入り、すっかり樹液は乾いているようだがクワガタたちはどうしているだろう。。。 。。。さすがコクワはつわものだ(^_^;) まだまだ元気な姿を見ることが出来る。40mmを少し超える程度だが、なかなかカッコイイフォルムだ。
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メクレのわずかな隙間には、まだ樹液が滲んでいるようだ。腹いっぱいになって元気に冬を乗り越えて欲しいなぁ。。。
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珍しく真昼間から樹皮上をウロウロしていたちょっと不気味なこのイモムシが、樹液に群がる生き物たちの恩人であるボクトウガの幼虫だ。雑食性の彼らはクヌギなどの樹皮の下に潜り込んで木質部や形成層を食べながら育つ。形成層の齧り跡からは樹液が滲み出る。幼虫はこの樹液を飲み、更に樹液に誘われて集まるハエやガなどを待ち伏せして捕食するのだと云う。
クヌギやコナラの樹皮を人為的に傷つけても樹液が出るのはせいぜい2ヶ月ほど。夏になると毎年樹液を流すクヌギには、どうやらこのボクトウガの幼虫が一役買っている可能性が高いらしい。
ありがたや!ボクトウガ!!(^o^)
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もう10月に入ったと云うのに、ノコが頑張っているのを発見。さすがに弱々しく寂しそうに見える。カブトの現れる7月中旬からめっきり姿を見かけることが少なくなるが、どっこい、最後まで頑張るのは彼らのようだ。
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8/27のフィールドノートで、野生の花をまだ見たことがないと云っていたカンアオイの花。ビロードのような細かな毛に覆われたうす紫色の花が地面の際にひっそりと咲いていた。こんな薄暗い林床で秋から冬の間に地味な花を咲かせたところで、花粉の媒介をする蝶やハチたちに見つけてもらえるのだろうか。。。? 実はカンアオイの受粉を担うのはナメクジやカタツムリ、ヤスデやダンゴムシだと云う説がある。真偽のほどは・・・さていかに?

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秋になると、里山のそこかしこにキクの仲間が花開く。明るく乾燥した草原を好むもの、少し湿った薄暗い場所を好むもの。。。暗い谷津の谷頭で薄青紫の優しげな花を開いていたのはカントウヨメナ? ユウガギク??
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谷頭(谷津の最奥部)の斜面から、一年を通じて絞り出される根垂水(ねだれ)を頼りに生きている生き物たちも多い。傘の直径10mmに満たない、この透明感のある紅色の可憐なキノコはヌメリアカヌマベニタケ???
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これは、セリ科シシウド属の「ノダケ」。 暗紫色の花が特徴的なこのノダケの根や葉は、生薬として利用されるという。

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この日一番目を惹いたのがこのホトトギス。湿った日陰の斜面から、園芸種と見紛う美しい花をいくつも付けた茎を垂らしている。一見派手に思える花模様と形だが、秋の里山にとても良く似合う色合いの、野趣に富んだ魅力的な花だ。
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こちらは、名前は良く耳にするがなかなかお目にかかれなかったワレモコウ。珍しいからではなく、あまり意識的に眺めていなかったためだろう。ドライフラワーのような花序が可愛らしい。
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秋の林縁を美しく彩る代表格である、ガマズミの実。艶やかな赤い実に混じって、毛の生えた緑色の大粒の実がある。ガマズミミケフシタマバエと云う寄生バエによって起こされた虫こぶ、ガマズミミケフシだ。
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こちらはマメ科のコマツナギの実。 右の写真が約1ケ月前の花姿だ。天竺が夏から初秋へ移り変わる様子は、8月27日のフィールドノートとの比較で確かめて欲しい。
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田んぼの脇の明るい斜面に生えていたツルボも、すっかり見栄えのしない実姿に変わりつつある。(右は8/27の花姿)
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一面に咲いていたのはイヌホオズキ。シベの黄色がよく目立つ可愛らしい白花だが、全身が有毒とのこと。実はナス科らしく黒紫色に熟する。
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いかにも繊細で、いかにも弱々しく立ち上がるツリガネニンジン。秋の草原ではお馴染みの花だ。優しげな姿とは裏腹に、高麗人参にも似た太くてゴツい根を持つと云う。
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イヌタデの紅色の花も今が盛り。 これからひときわ美しく紅葉するハゼの葉。

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下唇を突き出したような小さな花を付けたヤマハッカには、蜜を求めた小さな昆虫たちがよく集まる。 この花とも葉ともつかぬ奇妙な様相を呈しているのは、シダの仲間であるフユノハナワラビだ。
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刈り取られた稲の切り株から二番穂が立ち上がり、小さな花を付けている。冬の谷津田に残るイネの穂は、大抵はこうして秋遅くに実ったもの。
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田んぼの脇の湿った草地に群生していたミゾソバ。花の先がピンク色になるのが普通だが、ここは珍しく純白の花が咲きそろっていた。 先程の花を付けていたカンアオイの葉模様とは全く様相を異にするが、どうやら同じカントウカンアオイのようだ。
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赤味を帯びたイタドリの花 葉先が尖らず、葉より短い花序をつけるマルバハギ(。。。だと思う)
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小さなキツネノマゴで吸蜜するチャバネセセリ 同じキツネノゴマで吸蜜中のキチョウ
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そしてノチドメ(丸い葉)?からのぞく小さなキツネノゴマを見つけたクマバチ。蜜を求める昆虫たちにとって、キツネノゴマは何か特別な魅力があるのだろうか? ジャノメチョウの仲間では一番見かける頻度の高いヒメジャノメ。
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これだけはっきりとした模様を持つのだから同定は容易だろうと考えたのが甘かった。。。つい開いた翅の表側ばかりを写していたが、ヒョウモンチョウの仲間は翅裏の特徴で見分けることが多いようだ。林縁の草原と云う環境からミドリヒョウモンかとも考えたが、右側の写真でわずかに見える翅裏から、メスグロヒョウモンの♂と判断した。
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アザミの仲間の蕾に止まるアキアカネ。 いつもはフラッシュを焚かないと手ブレしてしまう薄暗い場所でしか見かけないオオアオイトトンボが、珍しく明るい場所にいた。ようやく本来の色調を撮影できた。
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ノシノシと草原を揺するショウリョウバッタの大きなメス。 カマキリも産卵の季節を迎えて命がけの?交尾に臨む。。。
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いつも水の切れない谷津田の田んぼ。乾燥させて土を休ませることが出来ないことから稲作には不向きだと云うが、この冬の間も水の残る湿田こそが、水辺の小さな生き物たちの命を育むのだ。(右はヒメゲンゴロウ)
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気が付けば降り注ぐ日の光もすっかり秋の優しい陽射しになっている。田んぼの周りには秋の稔りを求めて、大小さまざまな大きさのイノシシの足跡が。
この谷津田には、人の営みと共存する数え切れないほど多くの生き物たちが暮らしている。また来年も、素晴らしい風景に出会えることを願わずにはいられない。。。

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帰路、彼岸花の鮮やかな朱が目に飛び込んできた。こんな風景は安曇野だとか遠野だとか、どこか遠くの田舎に行かなければ見られないものだと思っていた。。。東京からわずか1時間。この里に今も残されている自然と先祖とを大切にする人々の暮らしのあり方に、秋の陽射しと同じように明るく暖かな気持ちで、今日の1日を終えることが出来た。

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