2005/12/25(日)  晴れ

当初の暖冬との予報が見事にハズレて、12月に入ってから全国的に記録的な寒波に見舞われている。北海道や本州の日本海側をはじめ、全国各地で12月としては史上最高の積雪量を記録するなど、大きな被害が出ていると、ニュースで連日報じられている。
もう忘れかけているが、そういえば今年の夏は『記録的な猛暑』だった。『記録的な旱魃』『記録的な水害』『記録的なハリケーン』。。。昨今、地球規模で『記録的な』と称される異常気象が頻発しているようだが、豊かさを追求する人間の経済活動が、寛容な自然に甘えすぎてきた結果なのだろう。

我々はわずか半世紀足らず、たった1つの世代の中で、世界に誇るべき持続可能な自然との共生関係を捨て去り、一方で物質的豊かさの頂点を極めた。このような、世界でも例のない経験を持つ日本こそが、世界に先駆けて「本当の豊かさ」について省み、見つめ直し、問いかけてゆくべきなのではないだろうか。。。
。。。などと云う、大きなテーマに心痛めつつ、「どうせなら『記録的な採集』ができたらいいのに」なんて考えているふつつかな俺。。。m(__)m  ここのところ、谷津田とその周辺に住む生き物たちと触れ合ってばかりいたが、今年最後になるであろう今日は、台地上(丘陵)にある畑作地域の雑木林を歩くことにした。

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千葉県 某所

畑は水田に比べて雑木林への依存度が高い。堆肥にするための落ち葉を採集するなどの利用価値が残されていることや、谷津の急な斜面林とは異なって、比較的平らな場所に林があることから手入れしやすいことも影響しているであろう。自然度は低くなるが、その分カブクワ達と出会う可能性が高いと云えるだろう。 さて、良い樹が見つかるといいのだが。。。
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林の入り口には「五穀豊穣・大漁満足」「祖霊安鎮」を祈念する出羽三山(月山大神・羽黒山大神・湯殿山大神)の石碑が。農地に隣接するヤマが信仰の対象になっている例は多い。 青空にクヌギの樹冠が林立している。どうやら予想していた通り、なかなか期待の持てる場所のようだ。

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さっそく目に飛び込んできたのは樹液痕も露わなクヌギの群。いくつかの樹にはトラップの残骸も残されている。容易に入ることのできる場所だけに、夏の間は「カブト・ノコ・コ」の採集に訪れる家族連れが多いのだろう。毎度のことながら、こういった場所では傷つけられた樹が多いのが残念だ。
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本来であれば一番期待が持てたであろうクヌギ。残念ながらほとんどのメクレが剥がされている。
足元に残されていたノコ・カブ♀のムクロで、意味のない演出を楽しんでみる。。。(^^ゞ
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立ち枯れのクヌギや倒れた朽木も多く、普通種の発生源には事欠かない。おそらくは賑やかな夏を迎えることだろう。
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クヌギ自体は多いことから、もっとスーパーな樹を求めて奥へ奥へと進む。しかし、少し道を外れるとこんな風に竹やぶに覆われている場所が多く、思うような場所が見つからない。。。

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、と、ここで枝分れのないトゲだらけの低木が数本立っているのを発見。山菜の王様タラの芽だ。日当たりの良い雑木林の林縁には、これと良く似たハリギリやイヌザンショウも多い。見分けるポイントの一つは、右の写真でトゲに囲まれて幹をぐるりと回っている葉痕。タラノキの葉は1枚が非常に大きいため、葉の付け根が幹を取り囲むように半周以上付く。従って落葉後の葉の跡が、こんな風に馬蹄のように残されるのだ。
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そうこうするうちに、少しばかり期待の持てるクヌギの姿が増えてきた。なかなかいい感じだ。雑木林の手入れ方法は、ひとつのヤマでは概ね同じような方法を取る。こんなクヌギがあると云うことは、他にも台場風のクヌギが残されているはずだと思うのだが。。。
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。。。ん、残念。。。少し遅かった。かなり広い面積のクヌギ林が切り倒された伐採地に行き着いた。
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ところで、伐採の跡は必ず段違いにチェーンソーが入れられている。これは木が倒れる際に木質部を引き千切りながらゆっくりと倒れるようにする役目を持ち、この段差を「つる」と呼ぶらしい。
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伐採された跡地は一見痛々しく見えるが、こうして定期的に樹を切り倒すことで暗い林床に光が入り、明るい環境を好む植物や昆虫たちを守ることになる。人の暮らしの営みが多様な生態系を生み出している良い例だ。
ここでも開けた広葉樹林を好むテンの糞を発見。彼らの糞は大きな石や切り株の上など目立つ場所に残されていることが多く、比較的見つけやすい。細身とは云え、尾を含めれば7〜80cmにも達する大柄で雑食性の彼らの命を支えるに足る、豊かな動植物がここには存在しているのだろう。

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気が付けば日が西に傾き、気温がずいぶん下がってきた。今日はライトを持ってきていない。迷路のようにいくつもの分岐を右左折してたどり着いた場所だけに、こんな場所で日が暮れたら真っ直ぐ帰る自信がない(^_^;) 周辺をもう少し探してみたいところだが、早目に帰路をとることにした。
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園芸種や庭植えではお馴染みの古典園芸植物のマンリョウ。このような野性のものはほとんど見かけることがない。 暗い林床ではもうフユイチゴが赤い実をつけていた。冬の雑木林散歩の密かな楽しみ。口に含んで甘酸っぱさを味わおう。
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林を抜け出ると、つぶれかけたカラスウリの朱色が夕陽に照らされ、コナラの小さな芽生えも落ち葉の上で驚くほど美しく紅葉。。。晩秋と呼ぶには既に遅く、冬と呼ぶにはまだ早い季節の微妙な色合いだ。

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雑木林の小径を、夕陽が美しく染めている。このところずっとご無沙汰だったクヌギの探索だが、やはり心躍るものがある。希望に適うメクレクヌギに出会うことは出来なかったが、台地上にある畑の周辺にクヌギが多いだろうと云う予想通りの結果が得られたことは大きな収穫だ。

ほぼ手付かずの山地の照葉樹林、根垂水(ねだれ)に支えられた自然度の高い谷津田と斜面林、そして人とのかかわりの中で残された台地上の雑木林。。。千葉の風景はどこも皆、魅力的な場所ばかりだ。
来年がまた、生き物たちとの出会いに溢れた素晴らしい1年となることを願いながら、今年最後の散策を終えることにしよう。。。

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