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芽吹きの頃

 
遠方のクヌギを見分けよう 芽吹きの頃
里山の春は足元からやって来ると云います。早春の暖かな日差しはまだ葉を繁らせる前の樹々の樹冠を抜けて林床の柔らかな土を温めます。まずはこの温もりの恵みを受けて、スプリングエフェメラル〜早春のはかない命たち〜と呼ばれる可憐な花々がいち早く目を覚まし、わずかな間隙に花開き、実を結ぶのです。
やがて暖かな恵みの雨が降り続き、日差しが日増しに暖かさを増す頃、その日は突然やってきます。昨日まで硬く閉じていた樹々の芽が、息をあわせたかのように一斉にパッとほころび始める。。。そう、春が来たのです。

「春は各駅停車でやってくる」???いえいえ雑木林の春は、ある朝突然にやってくるものなのです。

「はる」の語は「張る」から来ているそうです。一瞬の芽吹きに備えて張り詰めた緊張感。弾むような喜びに満ち溢れた季節。そういえば英語の「スプリング」も、張り詰めたバネが解き放たれるその瞬間を言い表したものなのかもしれませんね。
さてさてこの季節、我らがクヌギはどうしているのでしょう?
クヌギが葉と花をほぼ同時に開くのは、都会の公園でソメイヨシノの花びらが散った4月の中旬頃です。早春の雑木林を純白に彩ったコブシの花は終わり、気の早いイヌシデが赤みを帯びた芽吹きから若葉を黄緑色に染め始めた頃、コナラが和毛(にこげ)に覆われた淡い芽を開かせるのに少しだけ遅れて、ようやく眠たげに目を覚まします。
雑木林の春はどんな色に彩られるのでしょう?萌黄色?薄桃色?それともタンポポの黄色い花の色?
それでは季節限定、芽吹きの頃の雑木林の風景のほんの一端を紹介しながらクヌギの芽生えを見てみましょう。
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春の里山の色を言い表すことはとても難しい。萌黄・若草・黄緑・薄桃・・・なんと美しい景色かと、言葉を失うばかりである。少しだけ寄り道して、その彩をお楽しみ下さい。
 
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閑話休題
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さて、これが主役のクヌギの芽生え。クヌギは芽吹きとほぼ同時に花を咲かせる。花といっても花弁のない花穂を垂らせるだけなのだが、赤褐色に色づくその彩りは、淡い萌黄色の芽吹きを持つコナラとあいまって、えも云われぬ美しさだ。(撮影の関係で少し赤みが強く表現されています)
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葉が展開してくるにつれ、黄緑色の印象が強くなる。花穂の褐色とのバランスが絶妙。
長く垂れているのが雄花。どんぐりを生らす雌花は新葉の脇にほんの小さくつくらしい。
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画面手前からコナラ・クヌギ・ヤマボウシ(街路樹などで良く見掛けるハナミズキの仲間。5月ごろ白い花を咲かせる)
春の里山にはこんなにも異なる芽吹きの色がモザイクのように散らばり、優しげな色合いを醸し出している。
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中央のコナラを挟んでクヌギが見える。「枝ぶり」「芽出しの色」と両者の違いがとてもよくわかる。
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春の里山は暖かな日差しによって水蒸気があがり、ぼんやりと霞がかることが多い。いくつもの色を滲ませて、より一層淡い色合いが引き立つ。
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田起こしされ、水が張られた谷津田を見下ろすように、斜面にはクヌギが並んでいる。いつまでもこんな風景が残されることを願わずにはいられない。
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さて、遠景をひとつ。画面中央右寄りに、頭のぬけ出た樹冠が見える。実際の目には少し褐色がかったまばらな樹と写る
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こうして意識してみると、樹々はそれぞれに特徴のある樹形と色を持っていることがわかる。かなり遠方でも色彩の違いだけでクヌギと見分けがつく季節、一月後に迫ったクワガタシーズンに向けて芽吹きの頃の下見はかかせない。(写真では色が滲んで判別しにくいが、左上部にもクヌギがあるのがおわかりだろうか?)
ずいぶんと長らくお付き合いいただきましたが、これで樹液酒場のホスト、クヌギの見分け方については終わりです。
随分と能書きが多いと感じたかも知れませんが、もし野生のカブトやクワガタが樹液に群がる姿を、自分たち家族の力で見たいと本気で願うとしたら、きっとこのノウハウが生かされる瞬間があると信じています。

バーチャルな体験はここまでです。ここから先は、実際に雑木林に行って、ご自身の目でお確かめ下さい。それが一番の近道です。
どうか頑張って、幸運を祈ります。

 

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