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【落葉樹?常緑樹?】
落葉樹と常緑樹、この違いにも植物が生き抜くための戦略が見え隠れしています。一見命がみなぎっているように思える生き生きとした樹木も、実はその大半を占める木質部は既に生命活動を終えた死んだ細胞です。地上部で盛んに活動しているのは「形成層」と呼ばれる樹皮と木質部の間にあるわずかな部分と、頂芽、それに葉だけです。
生きているということはエネルギーを消費すると云うことですが、植物は十分な光と、適切な気温と、必要な水分がある限り自給自足で生きてゆくことができます。
しかし、それら光合成を行うための十分な条件が得られない環境の下では自給自足は適わず、むしろ生きて「呼吸」している部分が大きな負担になってしまうのです。
日本の気候を考えて見ましょう。夏は雨季にあたります。暖かく、降水量の多い夏は多くの植物にとって最適の生育環境になります。しかしやがて迎える冬。気温が下がり、光量は乏しく、太平洋側では乾燥した毎日が続きます。
そこで一部の樹々は、十分な光合成を行うことができないこのような冬の環境下でのエネルギー消費を極力抑え、蒸散による水分の損失を防ぐために大切な葉を全て落すことにしたのです。
葉を落す前には、来年の春に再び葉を作るための貴重な成分をなるべく回収し、そのために葉は豊かな緑色から黄色や紅色に変化します。こうして美しく紅葉した葉を秋に落し、厳しい冬を迎える準備をするのです。
しかし、一方でこれは植物にとって大変負担の大きな変化となります。自分の命を支えるための葉を全て失ってしまうのですから。
葉を落さずに冬をやり過ごすことができるのなら、もちろんそれに越したことはないでしょう。
そこで比較的暖かな地方に生育する植物の多くは、葉を落すことなく冬を迎えます。光合成の条件が揃わないこの季節を生きた葉を残したまま耐えるためには、先にあげた「燃費」の良い植物であることが求められるでしょう。こういった理由から、冬も葉を落さない常緑樹の多くは「陰樹」であることが多いようです。
逆に、酷寒の地に生える樹々はどうでしょう。春に元通りの緑の葉を繁らせるには大変なエネルギーを必要としますが、北国の短い春にこれらをいっせいに行うことはとても困難です。
そこで寒冷地に分布する植物の多くも、暖地の植物と同じように葉を残したまま冬をやり過ごす選択をしたのです。より過酷な条件下で葉を残すことから、その大半が「陰樹」であるのみならず、貴重な水分を失いにくい「針葉樹」であるということも頷けるでしょう。
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