生態からみた雑木林 陽樹とは?陰樹とは? 光合成と呼吸 広葉樹?針葉樹? 落葉樹?常緑樹?
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【 遷移(1)〜植物群落の移り変わり〜 】

今まで見てきた植物のさまざまな性質は、それぞれの植物がそれぞれの方法で生存競争を勝ち抜くために、長い進化の過程で手に入れてきたものです。とりわけ光と水を巡る植物の競争は熾烈で、ある一定の植物群落が長期にわたり安定して世代を重ね続けることは極めて困難です。

もし、人間の働きかけが一切なかったとしたら、植物たちは一体どんな競争をし、移り変わりをしてゆくのでしょうか? その移り変わりを生物の世界では「遷移(せんい)」と呼んでいます。

ちょっと極端な例になりますが、火山の噴火で大地が溶岩に覆い尽くされてしまった場合を例に、そこでどんな競争が繰り広げられるかを見て行きましょう。

溶岩に覆われた大地は、植物が根を下ろしたり水分を保持する土壌がまだありません。あるのはさえぎるものなく降り注ぐ太陽の光と、岩のくぼみなどに溜まったわずかな水分だけ。この過酷な環境に適応できるのは「地衣類・蘚苔類」と呼ばれるコケの仲間たちだけです。
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長い年月の後、コケの朽ちた腐植の蓄積や岩石の風化によって、少しずつ土壌が形成されてゆきます。
風によってさまざまな植物の種子がやって来ても、栄養に乏しいわずかな土壌と著しい乾燥に耐え切れず、そのほとんどが枯死することになります。
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しかし、やがてはこの不毛と思える大地に根を張る者たちが現れます。乾期を種子でやり過ごし、ほんの少しの水分を得ると一気に生長し、花を咲かせ、種子を残すと後は枯れてゆく。。。「1年生草本」と呼ばれる小さな植物たちです。
芽生えから結実までの一生をわずか数ヶ月で成し遂げる彼らは、その短い周期の世代交代と、風による播種と云う大きな移動力乾期に耐える種子とを武器に、やがては大地を緑豊かな草原に変えてゆきます。
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その結果、腐食はますます厚く積もり、土壌が更に形成され、植物が生育できる環境が植物自身の働きによって整えられてゆくのです。 
一世を風靡した1年生草本の前にも、やがて手強い敵が現れます。1年で枯死することなく、地下の根や茎で冬をやり過す「多年生草本」と呼ばれる者たちです。
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1年生草本たちの繁栄が生み出した土壌に根を張った彼らは、春になると地下に蓄えていたエネルギーを使い、(1年生草本の)種子からの芽生えをはるかにしのぐ勢いで若芽を伸ばし、葉を広げ、光を独占するようになります。
こうしてそれまで隆盛を極めていた1年生草本たちは、自らの繁栄が生み出した「より快適な環境」がゆえに、多年生草本たちに道を譲ることになるのです。
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豊かになったとはいえ、まだ大きな樹木を支えるだけの土壌や保水力を持たない大地では、例えば「一面のススキの原」のように多年生草本が勢力を強めてゆきます。
しかしそれも長くは続きません。1年生草本がそうであったように、自身の繁栄は、自然環境を更に整え、その結果さらに強力な敵を呼び込むことになるからです。

さて、ずいぶんと漢字の多い文字ばかりが並んでしまいましたが、ここに至ってようやく木本(樹木)類の登場です。

もちろん、実際にはこのような典型的な遷移の過程をたどることはまれなことでしょう。そもそも出発点である「溶岩に覆い尽くされた台地」などは、滅多に見られるものではありませんし、仮にあったとしても遷移は数十年・数百年単位の出来事ですから、人がそれをつぶさに観察することは適いません。

それでもなお、私たちが目にする自然の全てが、決して恒常的に安定したものでないことは確かです。競争と生物の繁栄がもたらす環境への働きかけが、常にこの大地をダイナミックに変遷させているのです。

長く続いた「植物の生態から考える雑木林」もいよいよ大詰めです。私たちの郷愁を誘う雑木林が、一体どんな存在であるのか?次章ではそれを解明してゆくことにしましょう。

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