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溶岩に覆われた大地は、植物が根を下ろしたり水分を保持する土壌がまだありません。あるのはさえぎるものなく降り注ぐ太陽の光と、岩のくぼみなどに溜まったわずかな水分だけ。この過酷な環境に適応できるのは「地衣類・蘚苔類」と呼ばれるコケの仲間たちだけです。 |
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長い年月の後、コケの朽ちた腐植の蓄積や岩石の風化によって、少しずつ土壌が形成されてゆきます。 |
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風によってさまざまな植物の種子がやって来ても、栄養に乏しいわずかな土壌と著しい乾燥に耐え切れず、そのほとんどが枯死することになります。 |
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しかし、やがてはこの不毛と思える大地に根を張る者たちが現れます。乾期を種子でやり過ごし、ほんの少しの水分を得ると一気に生長し、花を咲かせ、種子を残すと後は枯れてゆく。。。「1年生草本」と呼ばれる小さな植物たちです。 |
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芽生えから結実までの一生をわずか数ヶ月で成し遂げる彼らは、その短い周期の世代交代と、風による播種と云う大きな移動力、乾期に耐える種子とを武器に、やがては大地を緑豊かな草原に変えてゆきます。 |
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その結果、腐食はますます厚く積もり、土壌が更に形成され、植物が生育できる環境が植物自身の働きによって整えられてゆくのです。 |
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一世を風靡した1年生草本の前にも、やがて手強い敵が現れます。1年で枯死することなく、地下の根や茎で冬をやり過す「多年生草本」と呼ばれる者たちです。 |
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1年生草本たちの繁栄が生み出した土壌に根を張った彼らは、春になると地下に蓄えていたエネルギーを使い、(1年生草本の)種子からの芽生えをはるかにしのぐ勢いで若芽を伸ばし、葉を広げ、光を独占するようになります。 |
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こうしてそれまで隆盛を極めていた1年生草本たちは、自らの繁栄が生み出した「より快適な環境」がゆえに、多年生草本たちに道を譲ることになるのです。 |
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豊かになったとはいえ、まだ大きな樹木を支えるだけの土壌や保水力を持たない大地では、例えば「一面のススキの原」のように多年生草本が勢力を強めてゆきます。 |
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しかしそれも長くは続きません。1年生草本がそうであったように、自身の繁栄は、自然環境を更に整え、その結果さらに強力な敵を呼び込むことになるからです。 |
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