【植物の生態のまとめ〜その1〜】
以上で 1)陽樹と陰樹、2)広葉樹と針葉樹、3)落葉樹と常緑樹、といった植物の形態的・生態的な特徴が出揃いました。少々混乱してきた頃でしょうか?ここで少し整理をしてみましょう。
細かな点は無視して、それぞれが競争に勝ち抜くための戦略を極力簡潔に述べると。。。
1) |
-a) |
「陽樹」は多くの光が必要な燃費の悪い樹だが、早い生長で勝負する。 |
-b) |
「陰樹」は耐陰性が高く、省エネ型の生長で勝負する。 |
2) |
-a) |
「広葉樹」は広い葉を広げて光を独占することで勝負するが、乾燥には弱い。 |
-b) |
「針葉樹」は葉からの蒸散が少なく、乾燥に耐えることで勝負する。 |
3) |
-a) |
「落葉樹」は冬の厳しい環境を葉を落すことで耐える。 |
-b) |
「常緑樹」は省エネ型の生活をすることで葉を残しながら冬をやり過ごす。
特に酷寒の地で過ごす常緑樹は耐乾燥性も兼ね備えている。 |
上記特徴の組み合わせ全てを網羅すると
●常緑の広葉樹で陽樹
●常緑の広葉樹で陰樹
●常緑の針葉樹で陽樹
●常緑の針葉樹で陰樹
●落葉の広葉樹で陽樹
●落葉の広葉樹で陰樹
●落葉の針葉樹で陽樹
●落葉の針葉樹で陰樹
の8通りになります。何だか見ているだけで目がチラチラしてきますよね(笑)
そこで関東周辺でみかける機会の多い植物が上記の8通りのどれに当たるのかを示したのがこちらの表です。(⇒植物の形態・生態的分類表)
ひとめで「常緑の広葉樹で陰樹」「落葉の広葉樹で陽樹」「常緑の針葉樹で陰樹」のいずれかに分類される植物が多いことがお分かりいただけるでしょう。
誤解や例外を恐れずに簡略化するなら、
●常緑広葉樹は、冬季の気象条件に恵まれた「温暖な」地域に分布し、冬の間も葉を落さずにやり過ごすことから燃費の良い陰樹であることが多い。
●落葉広葉樹は、「比較的冷涼な」地方に分布し、冬は葉を落とすことで耐えている。春〜初夏にかけての条件の良い時期に一気に新葉を展開させて成長するために、燃費は多少悪くとも成長が早いもの(=陽樹)が多い。
●針葉樹は寒冷や乾燥といった「より厳しい条件」の下に分布することが多く、短い春〜初夏に新しく葉を展開することが困難なために常緑であることが求められ、葉を残したまま冬を乗り切るために燃費の良い、すなわち耐陰性が強いもの(=陰樹)が多い。
と云うことになります。大掴みにするのであれば、「常緑樹は陰樹」「落葉樹は陽樹」が多いと捕らえておくだけでも良いでしょう。
もちろん例外もたくさんあります。例えば「針葉樹」と聞いて誰もが真っ先に思い浮かべるであろうアカマツ・クロマツは「陽樹」の代表格ですし、世界遺産になった白神山地でも有名なブナは、他の多くの落葉広葉樹とは異なって「陰樹」です。 |
それでは、ここで曖昧に云っている「温暖な」「比較的冷涼な」「より厳しい」という気候条件は、どのあたりを境にしているのでしょうか?
次の章では、それら植生分布についてお話したいと思います。
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